実話

最近テレビを見ていて時々違和感を感じてしまう。いかに実話に基づいているとは言っても所詮はフィクションなのであるが、問題はどこまでが確実な実でありどこからは嘘かもしれないということが不明瞭になってしまうこと。たとえば流行の韓ドラ「大長今」 某所の解説をみると
  朝鮮時代 医女 長今の成功談。男性女卑の朝鮮時代の体制の中、恐ろしい執念と意志で、宮中最高の料理師になり、様々な困難の果てに朝鮮最高の医女になって御医をはじめとした数多くの内医院の男性の医者たちをさしおいて、王の主治医となった歴史上の実在の人物 長今。大長今という呼び名まで受けた伝説的な人物である長今の波瀾万丈な人生を通して、これまで歴史の中に埋もれていた女性の意味深い成功事例を紹介している。
 となっている。大筋はほとんど本当かと思ってしまいそうだが、この中でどれが本当でどれが嘘なのだろうか? 

  1. 宮中最高の料理師       ほとんど確実な嘘(料理人だった記録はなし)
  2. 王の主治医となった      かなり嘘くさい(医女ではあったが主治医かどうかは?)
  3. 歴史上の実在の人物 長今   ほとんど確実な実(記録にある)
  4. 大長今という呼び名まで受けた伝説的な人物 かなり嘘くさい(大長今と呼ばれていたようだがその理由は言われているのとは違う?)

これについては〈朝鮮史を駆け抜けた女性たち⑥〉 実在の医女、李朝実録に10回登場、長今 http://210.145.168.243/sinboj/j-2004/06/0406j1129-00001.htm を参照のこと。特に大長今の[大]が偉大なるの[大]ではなさそうということで伝説というには程遠いと思われる。もっともこの番組が嘘から出た真で既に伝説にしてしまったかもしれないが。こんなふうにいつの間にか[嘘]話が[実]話になっていくものなのだろうか?こういう話のふくらませ方は作家としては素晴らしいと思うし、お話自体はとても面白くて文句をいうつもりはないのだが。
よく見ているというわけではないがもう一つ気になっているのが「義経」、どういうわけか梶原源太景季が義経一行と仲がよく、いつもくっついてまわっている印象がある。そこから生じる父親の梶原景時との葛藤シーンなどもあったりしてこれは本当かと思ってしまいそう。でもこんな話私は聞いたことないんだけど、どこかにそれらしき文献でもあるのかしらん?逆に一の谷合戦で義経鵯越に景季が同行していないなどはほとんど確実だろう(別の記録がある)。面白そうな人物で義経と絡ませてみたかったという作家の気持ちはよくわかるのだが。